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12/13/2019

海外不動産の赤字処理についての税制改正

自民党・公明党から2020年度の税制に関する指針が発表されました。その背景については、すでにブログで報告済みです。

以下に、税制大綱の文章を引用します。

3 租税特別措置等
(国税)
〔新設〕
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例を次のとおり創設する。

(1) 個人が、令和3年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その国外不動産所得の損失の金額のうち国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす。

(注1)  上記の「国外中古建物」とは、個人において使用され、又は法人において事業の用に供された国外にある建物であって、個人が取得をしてこれをその個人の不動産所得を生ずべき業務の用に供したもののうち、不動産所得の金額の計算上その建物の償却費として必要経費に算入する金額を計算する際の耐用年数を次の方法により算定しているものをいう。

① 法定耐用年数の全部を経過した資産についてその法定耐用年数の20%に相当する年数を耐用年数とする方法
② 法定耐用年数の一部を経過した資産についてその資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の 20%に相当する年数を加算した年数を耐用年数とする方法
③ その用に供した時以後の使用可能期間の年数を耐用年数とする方法 (その耐用年数を国外中古建物の所在地国の法令における耐用年数としている旨を明らかにする書類その他のその使用可能期間の年数が適切であることを証する一定の書類の添付がある場合を除く。)

(注2) 上記の「国外不動産所得の損失の金額」とは、不動産所得の金額の計算上生じた国外中古建物の貸付けによる損失の金額(その国外中古建物以外の国外にある不動産等から生ずる不動産所得の金額がある場合には、当該損失の金額を当該国外にある不動産等から生ずる不動産所得の金額の計算上控除してもなお控除しきれない金額)をいう。

(2)上記(1)の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上、その取得費から控除することとされる償却費の額の累計額からは、上記(1)によりなかったものとみなされた償却費に相当する部分の金額を除くこととすることその他の所要の措置を講ずる。

法律などの条文は、噛み砕かないとよく分かりません。これからまとめることには間違いがあるかも知れないことをご承知おきください。

まず、方針として、外国の不動産で賃貸を行った場合は、日本の法律で定められた耐用年数や計算式を使って建物を減価償却し、その結果、不動産所得を赤字にすることは認めないということです。海外不動産の購入、賃貸を使った所得に関する節税はできなくなります。始まるのは、令和3年からです。また、「国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合において」と、所有について言及しているため、すでに購入している人にも同じ規定が適用されるものと考えます。

このルールの変更により、減価償却分の損失を毎年処理できなくなった場合は、「上記(1)によりなかったものとみなされた償却費に相当する部分の金額を除くこととすることその他の所要の措置を講ずる」とあるので、物件の売却時に売却金額から差し引くようにするか、その他の対応策が講じられことになります。

では、減価償却を毎年処理できなくなるか?というとそういうことではなさそうです。

注2)を確認してください。「その国外中古建物以外の国外にある不動産等から生ずる不動産所得ある場合、損失の金額を海外の不動産等から生ずる不動産所得の計算上控除してもなお控除しきれない金額」が赤字で損失になっていると、減価償却分の控除ができません。裏返すと、減価償却分以外が黒字なら、不動産所得がゼロになるまでは、減価償却分の金額を処理できると理解できます。

また、(1)の③には、「その耐用年数を国外中古建物の所在地国の法令における耐用年数としている旨を明らかにする書類その他のその使用可能期間の年数が適切であることを証する一定の書類の添付がある場合を除く」とあります。アメリカで不動産を買ったのなら、アメリカの法律に基づいて減価償却を行っていることを示す文書を提示して、そのルールに従って減価償却を行えば、不動産所得が赤字になっても問題なく、その他の所得と合算することが可能になると解釈できます。

すでに購入している立場としては、途中でルール変更となるため、どういう風に処理することになるかが気になります。富裕層にとっては、節税の方法が一つなくなることになりますが、日本とアメリカでの売却時の利益に大きな差がなくなるため、違う意味で便利になるという考え方もできます。現時点では、方針が発表されただけですから、今後は、細則がどうなるかを注目していきたいと思います。


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