ハワイ、ワイキキでコンドミニアムを買う!: 12月 2019  

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12/14/2019

海外不動産の赤字処理についての税制改正: 異なる視点

2020年度の税制大綱が発表されて海外不動産の取得、賃貸により減価償却を使って所得税を減らすことができなくなったというニュースなのですが、それは富裕層にとっての話です。今日は、ちょっと違う観点からこの話を考えてみます。

不動産の長期所有(5年以上)は、20%の譲渡税が課せられます。所得税率が20%を超えている人は、赤字で所得を減らせると所得税が減ります。この赤字(ほとんどが不動産の減価償却費)には、不動産の売却時に20%の譲渡税がかかりますが、富裕層は所得税率がかなり高いのでその分節税になるわけです。

では、所得税率が20%以下の人はどうなるでしょうか。不動産所得の赤字分を給与所得などと合算すると税金は還付されますが、不動産を売却した時の譲渡税率20%の方が高くてより多い税金を支払う可能性があります。また、不動産所得の赤字は、税務署に届け出せず白色申告をしていると、1年のみ有効。青色申告でも3年分しか先送りできません。

つまり、所得がそれほど大きくない人がハワイに不動産を買った場合は、所得税率よりも不動産の売却時の税率の方が高くて、高い税金を払うことになっているわけです。ところが、これから実施される法改正により、赤字処理できない不動産の減価償却費は、売却時に反映できることになります。所得税よりも売却時の譲渡税の税率の方が高くて損することがなくなるのです。

アメリカに不動産を買うという選択は、給与収入が高いからできるというものではありません。親からの相続が1000万円あれば、アメリカ本土に10年のローンを組んで、一戸建てを3軒買うことは可能です。英語ができるとか、リスクを取れるとかの条件をクリアする必要はありますが、少なくとも税制の影響で損することがないというのは、とても意味が大きいはずです。外国に不動産を購入するという選択肢は、富裕層だけのものでなくなったという側面が2020年の税制大綱にはあると私は思います。


12/13/2019

海外不動産の赤字処理についての税制改正

自民党・公明党から2020年度の税制に関する指針が発表されました。その背景については、すでにブログで報告済みです。

以下に、税制大綱の文章を引用します。

3 租税特別措置等
(国税)
〔新設〕
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例を次のとおり創設する。

(1) 個人が、令和3年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その国外不動産所得の損失の金額のうち国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす。

(注1)  上記の「国外中古建物」とは、個人において使用され、又は法人において事業の用に供された国外にある建物であって、個人が取得をしてこれをその個人の不動産所得を生ずべき業務の用に供したもののうち、不動産所得の金額の計算上その建物の償却費として必要経費に算入する金額を計算する際の耐用年数を次の方法により算定しているものをいう。

① 法定耐用年数の全部を経過した資産についてその法定耐用年数の20%に相当する年数を耐用年数とする方法
② 法定耐用年数の一部を経過した資産についてその資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の 20%に相当する年数を加算した年数を耐用年数とする方法
③ その用に供した時以後の使用可能期間の年数を耐用年数とする方法 (その耐用年数を国外中古建物の所在地国の法令における耐用年数としている旨を明らかにする書類その他のその使用可能期間の年数が適切であることを証する一定の書類の添付がある場合を除く。)

(注2) 上記の「国外不動産所得の損失の金額」とは、不動産所得の金額の計算上生じた国外中古建物の貸付けによる損失の金額(その国外中古建物以外の国外にある不動産等から生ずる不動産所得の金額がある場合には、当該損失の金額を当該国外にある不動産等から生ずる不動産所得の金額の計算上控除してもなお控除しきれない金額)をいう。

(2)上記(1)の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上、その取得費から控除することとされる償却費の額の累計額からは、上記(1)によりなかったものとみなされた償却費に相当する部分の金額を除くこととすることその他の所要の措置を講ずる。

法律などの条文は、噛み砕かないとよく分かりません。これからまとめることには間違いがあるかも知れないことをご承知おきください。

まず、方針として、外国の不動産で賃貸を行った場合は、日本の法律で定められた耐用年数や計算式を使って建物を減価償却し、その結果、不動産所得を赤字にすることは認めないということです。海外不動産の購入、賃貸を使った所得に関する節税はできなくなります。始まるのは、令和3年からです。また、「国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合において」と、所有について言及しているため、すでに購入している人にも同じ規定が適用されるものと考えます。

このルールの変更により、減価償却分の損失を毎年処理できなくなった場合は、「上記(1)によりなかったものとみなされた償却費に相当する部分の金額を除くこととすることその他の所要の措置を講ずる」とあるので、物件の売却時に売却金額から差し引くようにするか、その他の対応策が講じられことになります。

では、減価償却を毎年処理できなくなるか?というとそういうことではなさそうです。

注2)を確認してください。「その国外中古建物以外の国外にある不動産等から生ずる不動産所得ある場合、損失の金額を海外の不動産等から生ずる不動産所得の計算上控除してもなお控除しきれない金額」が赤字で損失になっていると、減価償却分の控除ができません。裏返すと、減価償却分以外が黒字なら、不動産所得がゼロになるまでは、減価償却分の金額を処理できると理解できます。

また、(1)の③には、「その耐用年数を国外中古建物の所在地国の法令における耐用年数としている旨を明らかにする書類その他のその使用可能期間の年数が適切であることを証する一定の書類の添付がある場合を除く」とあります。アメリカで不動産を買ったのなら、アメリカの法律に基づいて減価償却を行っていることを示す文書を提示して、そのルールに従って減価償却を行えば、不動産所得が赤字になっても問題なく、その他の所得と合算することが可能になると解釈できます。

すでに購入している立場としては、途中でルール変更となるため、どういう風に処理することになるかが気になります。富裕層にとっては、節税の方法が一つなくなることになりますが、日本とアメリカでの売却時の利益に大きな差がなくなるため、違う意味で便利になるという考え方もできます。現時点では、方針が発表されただけですから、今後は、細則がどうなるかを注目していきたいと思います。


12/02/2019

海外不動産の赤字を給与と合算できなくなることが確実に(3)

海外で購入する不動産から生まれる所得の赤字と給与所得の合算が禁止されるということについて考えています。3本目の投稿は、これからどうすべきか?を考えたいと思います。

海外に不動産を持って、それが黒字であれ、赤字であれ、日本で確定申告をしなければなりません。税制変更で減価償却の赤字を合算することが認められなくなるとどうすべきかが、本日のテーマです。

問題を煎じ詰めていくと、富裕層の場合は、不動産の所有から売却に至るまでの税金が、累進課税となる日本の所得税とあまり差がなくなるということになると思います。給与の所得税率が20%より低い人は、不動産所得の損失を給与収入と合算して、最後に譲渡課税を払うと、所得税に対して還付された税金の方が安くなるので、税金だけを考えると損するのですが、値上がり益や細かいところを考慮する必要があります。

ということで、人それぞれのケースで結論は異なると思うのですが、これからは法人所有を考えておくべきだと思います。現地にLLCを作って法人所有にすると、日本の確定申告と切り離すことができます。結果として日本での減価償却は関係なくなります。アメリカでの黒字をLLCから受け取る給与収入としない限り、日本での申告の必要はありません。

詳しいことは税理士に確認する必要がありますが、理論的に考えて、会社を解散して投資利益を確定するまでは、物件の価値そのものに関する日本における確定申告は不要であろうと思います。海外で所有している不動産に関する税金が高くなるのであれば、できることを考えるしかありません。日本での処理が複雑になるなら、LLC を作って会社所有にするのは一考の価値があると思います。

LLCを作って維持する費用は、年間300-600ドルぐらいです。英語の読み書きが必要ですが、日本の確定申告を税理士に頼むよりは安く済みます。LLCの所有にしてもアメリカでのタックスリターンは、法人として行う必要はありません。Disregarded Entityと言って、法人だけど無視できるという形態で個人で所有しているのと同じように申告できます。日本では、5年を超えないと不動産の売却は、短期所有の譲渡税が30%と高くなるのですが、法人所有にすればこの点も関係なくなるだろうと思います。

以前は、例えばアメリカの不動産を法人所有にしていると、法人の株式譲渡として、不動産の価値よりもかなり低い金額で相続するようなことが可能だったようです。しかし、国税は、不動産の資産のみを持つ会社は、会社の株式を譲渡する方式を認めなくなりました。ですので、法人を絡める方式自体も、国税がこの先どういう取り扱いにするかも注意が必要と思います。

現時点での税制がどう変わっても正しく納税を行うことは当然です。そもそも不正を行うほどの理解もスキルもありません。変更点を確認して、法人所有を検討するのが今の所考えられる現実的な対応だと思います。

2019/12/13 追記
税制大綱が発表されて、毎年の申告で処理できない減価償却については、物件の売却時に対応する方針となることが分かりました。不動産の減価償却だけが進んで処理できず、売却時にその分も譲渡税を支払うという理不尽な状況がないことが明確になりました。すでに海外不動産を所有している方は、そのままの状況で様子見するのが良いと思います。


12/01/2019

海外不動産の赤字を給与と合算できなくなることが確実に(2)

海外不動産の損金合算に関するルールがなぜ変更されるのかということを前回考えてみました。今回は、改正について気になるポイントをまとめたいと思います。

富裕層が不動産の減価償却を有利に活用しているという背景で行われる税制変更です。まずは、減価償却自体をどのように扱うかということがポイントです。不動産収入の損失処理は、白色申告では、その年に処理しなければならず、翌年に繰り越すことはできません。青色申告だと3年です。

減価償却は進んで売却時の税金が増えるのに、所有している間の赤字をきちんと処理できないのは問題だと思います。アメリカでも所得と合算する方法はありますが、不動産所得以外に収入がない場合、減価償却を含めた不動産収入の赤字は、物件の売却を行うまで、積算することが可能です。毎年、減価償却も進行するけれど、損金も同時に積み上げられるわけです。アメリカの方式は合理的だと思います。

問題点の繰り返しになりますが、減価償却分が多額になることを利用して所得税を下げることを当局としては阻止しようとしているわけです。政府が取り損ねている税金を取り戻す方法は3つです。

まず、譲渡税の税率を上げることです。国内20%、海外40%にすれば(個人的にはこれは止めてほしいです)税収を上げることができます。次は、最短4年になってしまっている償却期間を伸ばす方法です。私自身の場合は、日本の確定申告の償却期間は16年で、アメリカのタックスリターンは28年です。最後の方法は、合算を一切禁止するという方法です。どうなるでしょうか。

次に気になるのは、過去遡及です。ルールの変更を過去にさかのぼって適用するのか?というポイントです。私は、2013年の購入時点から損失を給与収入に合算し、所得税の還付を受けてきました。ルール変更でどうなるでしょうか?例えば、減価償却の計算方法が変更されると、何年何月何日まで購入した物件は、Aの方式で、それ以降は、Bの方式で計算しなさいになっています。今回の変更はどうなるのか?気になります。

また、この適用のタイミング、過去遡及は、駆け込み需要の問題に関わってきます。法律の施行が2021年4月1日であれば、3月31日までに購入が完了した物件は、現行法で処理できる可能性が高いです。そうすると、それまでに海外不動産を買いたい人が増えるかも知れません。どうしても節税効果を得たい人は、政府の発表を待って一気に動く必要があるでしょう。

この件に関してネットの記事を読んでいると、この税制変更でハワイの不動産価格が下がる可能性に触れられていところがありました。日本人でハワイの不動産を買っている人は存在しても、決した多数派を作っているわけではなく、日本人富裕層がそこまでの影響力を持っているとは思えません。自分自身への影響としては、それほど大きな影響を受けるとは思っていませんが、長期的な課題が出てくる可能性があるので引き続き情報収集を心がけていきます。